性暴力とは
世界の取り組み
残念ながら日本以外の国でも、性暴力は起こっています。
世界中で起こっている性暴力に、各国はどのような対策を取っているのでしょうか。
「犯罪白書2006」では、第6編第4章で「性犯罪の現状と対策」を取り上げ、諸外国における性犯罪の動向と対策を掲載しています。
日本が性暴力をゼロにするために何をすべきか、参考にしていきたいですね。
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【フランス】 【ドイツ】 【イギリス】 【カナダ】 【アメリカ】 【諸外国と比較した日本】

(1) フランス
フランスでは性暴力は「性的攻撃(agressions sexuelles)」と呼ばれています。「暴力、強制、脅迫又は不意打ちをもって実行するすべての性的侵害」と定義され、「強姦(viol)」、「その他性的攻撃(autres agressions sexuelles)」、「強姦以外の性的攻撃、性的ハラスメント(harcelement sexuel)」の三つに区分されています。
また15歳未満の児童に対する強姦等については、刑の加重規定が設けられています。

性的攻撃の認知件数は以下のとおりです。

出典:平成18年度犯罪白書 p.271 より

フランスの人口は、本土・海外県・海外領土を含めると約6,339万2千人(2007年1月1日現在)となっています。人口当たりの発生率は0.041%です。

フランスでは性犯罪被害の増加を受け、性犯罪の予防及び被害者の保護等を目的として、1990年代後半から、一連の法制度の整備を進めています。その中から3つを紹介します。

1)性犯罪者に対する社会司法追跡調査
性犯罪により有罪判決を受けた加害者に対し、再犯防止のための監視措置(転居通知義務、特定の者との接触禁止、子どもと日常的に接する職業への従事禁止など)に従う義務を課します。
2)性犯罪者に対する司法データベース
性犯罪により有罪判決を受けた加害者の身元、住所、変更に関する情報をデータベース化しています。
3)性犯罪者に対する移動電子監視措置
性犯罪により有罪判決を受けた加害者の身体の一部に発信器を装着し、その所在を司法当局が把握します。

(2) ドイツ
ドイツでは性暴力被害を「性的自己決定権に対する罪(Straftaten gegen die sexuelle Selbstbestimmung)」の一つとして、暴行、脅迫等により他人に性的行為を行うことを強要した者を処罰する「性的強要の罪(Sexuelle Notigung)」を設けています。その他「自己の地位を利用した性的陵辱」「抵抗不能の者に対する性的陵辱」等の罪もあります。
14歳未満の児童に対する性的行為をした者を処罰する規定は別に設けられ、刑の加重規定が定められています。

性的強要の認知件数は以下のとおりです。

出典:平成18年度犯罪白書 p.273 より


ドイツの人口は8249万人(2006年)となっています。人口当たりの発生率は0.019%です。
ドイツでは以下のような対策を取っています。

1)将来の刑事手続きに資するためのDNA鑑定
性的自己決定権に対する罪の嫌疑がかけられている被疑者又は被告人は、嫌疑の対象が重大な犯罪でなくてもDNA鑑定を実施することができます。

2)14歳未満の児童に対する性的行為の罪の法定刑の引き上げ
18歳を超えるものによる14歳未満の児童に対する性暴力の罪等の法定刑が、1年以上の自由刑から2年以上の自由刑に引き上げられました。

3)社会治療施設への性犯罪者の収容
一定の性犯罪により2年以上の自由刑を言い渡された受刑者のうち、処遇を指示された場合は、社会治療施設(自由刑執行の一形態として社会治療処遇を行う施設)に移送、収容されます。

4)改善及び保安処分
性暴力の加害者に対しては、犯罪に対する責任から独立したものとして、将来の犯罪行為を防止するための処分があります。
(1)保安監置
重大な犯罪を行うおそれのある者を、自由刑の執行終了後も拘禁する処分です。
(2)行状監督
犯罪を行うおそれのある者を、一定期間、保護観察官及び行状監督所による援助を行う一方で、生活を監督する処分です。性的自己決定権に関する罪のほぼすべてが、この対象となっています。


(3) イギリス
イギリスでは2003年に性犯罪法が成立しました。この法では、「被害者の同意を得ないで行う強姦(Rape)」、「挿入による暴行(Assault by penetration)」、「性的暴行(Sexual assault)」等を性犯罪としています。この中には「刑事司法法」において、「重大犯罪」とされているものもあります。
13歳未満の児童を対象とする性的行為については、被害者の同意がなかったことを要件としない等、別に規定を設けています。

強姦の認知件数は以下のとおりです。

出典:平成18年度犯罪白書 p.275 より


イギリスの人口は6006万8千人(2006年)となっています。人口当たりの発生率は0.023%です。

性犯罪に関する最近の立法としては、「性犯罪者法(Sex Offenders Act 1997)」、「犯罪及び秩序違反法(Crime and Disorder Act 1998)」、「刑事司法及び裁判所業務法(Criminal Justice and Courts Services Act 2000)」、「刑事司法法」等があります。
最近の取り組みとして、以下が挙げられます。

1)危険な性犯罪者に対する新たな処罰規定の新設
重大な性犯罪を行った者のうち、再犯により社会に重大な危害を及ぼす危険があると判定された者は、「社会防衛のための拘禁刑」又は「終身拘束刑」が科せられます。服役の最低期間を定め、経過期間後、危険性が十分軽減したと認められる時まで、仮釈放は認められません。

2)性犯罪者の情報登録制度
一定の性犯罪者について警察への届出義務を定めています。登録情報は原則として非公開です。

3)性犯罪者に対する命令
「届出命令」「性犯罪予防命令」「外国旅行禁止命令」「性的危害禁止命令」に違反した者は、拘禁刑や罰金が科せられます。

4)多機関連携社会防衛協議会
警察等の機関が社会に対する危険性が高いと評価した者(性犯罪情報登録制度に登録された性犯罪者、その他凶悪犯罪者等)について、関係機関による情報の交換や定期的な会合の開催によって、社会防衛とリスク管理を行います。

5)刑務所及び保護観察所における性犯罪者処遇プログラム
性犯罪者に対しては、刑務所及び保護観察所が、処遇プログラムを実施しています。自己の行動に対する弁明や正当化の改善、性犯罪の原因となった認知のゆがみの修正、被害者に与えた影響を学ばせること、犯罪をしないような生活スタイルを身に付けさせることなどの取組をしています。

(4) カナダ
カナダでは、性犯罪(sexual offences)を、被害者である男女の意思に基づかないで性交を含む性的接触を行う「性的暴行(sexual assault)」と、「その他性犯罪」に区分しています。
18歳未満の児童に対しては、別に規定を設けています。

強姦の認知件数は以下のとおりです。

「性的暴行レベル1」…被害者に軽症を負わせるか、傷害を伴わない性的暴行
「性的暴行レベル2」…被害者に対して、武器を用いるなどして脅迫を行う、又は傷害を伴うなどの性的暴行
「性的暴行レベル3」…被害者に重度の負傷等や、顔等に美観損傷を負わせる、又は被害者の生命を危険にさらすことをともなう性的暴行

出典:平成18年度犯罪白書 p.275 より

カナダの人口は3222万5千人(2006年)となっています。人口当たりの発生率は0.081%です。
カナダでは性犯罪に対して、以下のような取り組みが行われています。

1)特殊な不定期刑制度-「危険な犯罪者」認定制度
性的暴行により有罪を認定された者のうち、自己の性的衝動を抑制できず、将来他者への害悪を引き起こす危険性があると認められた場合、刑期の上限の定めのない絶対的な不定期刑を宣告する制度です。

2)施設内における性犯罪者処遇プログラム(連邦刑務所)
性犯罪被害者は、刑務所入所時に行われる「性犯罪者危険性評価(Sex Offender Risk Assessment, SORA)」の結果に応じた、性犯罪者処遇プログラムを受けます。

3)性犯罪者に対する社会内処遇(保護観察)
性犯罪被害者に対しては、仮釈放時に、再発防止プログラムや薬物療法などの処遇を実施します。

4)長期間社会内指導監督制度
上記1)「危険な犯罪者」の認定基準は満たさなくても、将来他者への害悪を引き起こす危険性等がある者は「長期犯罪者」として認定されます。2年以上の拘禁刑の言い渡しや、刑期満了後の指導監督を継続できます。

5)性犯罪者等に対する特殊な行為制限命令
14歳未満で、将来性犯罪に及ぶ危険性のある者は、その危険を恐れる人の申請に基づき、「正式誓約書」を提出させることができます。12ヶ月以下の期間、遵守事項を課することができます。

6)性犯罪者の情報登録制度
一定の性犯罪につき有罪の宣告を受けた者に対して、住所等の届出義務を課します。

(5) アメリカ

アメリカでは各州毎に性犯罪の種類、それに科せられる刑罰の内容が異なっています。
強姦の認知件数は以下のとおりです。
出典:平成18年度犯罪白書 p.279 より

アメリカの人口は2億9573万4千人(2006年)となっています。人口当たりの発生率は0.032%です。

性犯罪対策として、主なものを掲載します。

1)性犯罪者情報登録・公表制度
危険性の高い性犯罪者は、全国性犯罪者登録制度(National SexOffender Registry)に、終身に渡って登録されます。

2)性犯罪の刑の加重
一部の州では、子どもに対する性犯罪等について、刑の加重類型があります。

3)民事的収容
一部の州では、精神疾患等により性犯罪に及ぶ危険があると認められる者を、受刑後も治療施設等に収容します。

4)性犯罪者処遇プログラム
多くの州では、性犯罪者の厚生のため、認知行動療法等の性犯罪者処遇プログラムを実施しています。

5)電子監視
一部の州では、処遇を受ける性犯罪者に対する電子監視制度を導入しています。

(6) 諸外国と比較した日本

1)人口当たり発生率について
日本の人口は1億 2,776万7千人(2005年10月1日現在)、2007年度の強姦件数は1,766件、強制わいせつ件数は女性7,464件、男性が200件ですので、人口当たりの発生率は0.0074%です。世界の発生率と比較して随分低いように見えますが、これは日本が世界の国々と比較して、被害を届け出ることに対する心理的抵抗が高いと判断すべきでしょう。
性暴力被害に遭い、被害を届け出る女性は、わずか14.8%というデータ(法務総合研究所「第2回犯罪被害実態(暗数)調査」より)を当てはめると、強姦と強制わいせつの件数の合計は62,364件となります。ここから人口当たりの発生率を算出すると、0.049%となり、フランスとほぼ同等になります。
2)加害者への取り組み
日本では2006年度から、加害者の再犯防止のため、性犯罪処遇プログラムを実施しています。

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