あなたにこれから湧き起こる感情
被害に遭った方と接することで、あなたには様々な感情が湧きあがってきます。

1)被害者への不信や怒り
(1) 被害は本当にあったことなのだろうか
  • 性暴力被害に対しては、「一部の人にしか起こらない」「被害者も落ち度がある」といった誤解があります。あなたが誤った情報を信じていると、被害に遭った方の話に疑問を感じたり、信頼できなくなったりすることがあります。
  • 性暴力は、誰でも被害者、さらには加害者になる可能性があります。そしてすべての責任は加害者にあります。
  • 日本では性や性暴力被害について、正しい知識を得る機会はほとんどありません。ですからあなたが誤った知識の元で、被害に遭った方を誤解し、信頼できなくなるのは、仕方がないことなのです。自分を責める必要はありません。
(2) 一体いつまで被害について悩んでいるのか
  • 性暴力被害は、心に深い傷を残します。この傷は、被害に遭った方がもともと持っていた力を弱めてしまいます。このため、被害に遭う前であればなんでもなかった出来事や、周囲の人からの発言に対して、敏感に反応し、辛い感情が呼び起こされてしまうことがあります。また性暴力被害については、誤った情報が浸透しています。ですから被害に遭った方は、沢山の人から誤解を受けることになります。さらに、日本では、まだまだ被害に遭った方を支える体制が万全ではありません。
  • 被害に遭った方はこうした状況に置かれているため、回復にはとても時間がかかります。ですからあなたが、被害に遭った方に、対してイライラしたり、「たいしたことはない」と感じてしまうのは、仕方がないことなのです。自分を責める必要はありません。
(3) 被害後の行動が理解できない
性暴力被害に遭われた方は、被害後、次のような行動を取ることがあります。

● 誰とでも性行為をする、性を商品にする
● アルコールや薬物に依存する
● 自らを傷つける

被害に遭う前とあまりに違う行動を取ることが、まったく理解できないかもしれません。
これらはすべて、「自身を取り戻すためのプロセス」「生きる選択をするための術」です。
性行為では、相手から自分が必要とされていることを実感します。
そこに、加害者に奪われた「自分の存在意義」を見出そうとします。
また性で相手をコントロールする優越感も得られます。
アルコールや薬物を使用している時間は、心の傷を紛らわせることができます。
「楽になりたい」という気持ちが、習慣化、過度の摂取、依存へとつながります。
ケガをすると、身体の痛みが心の痛みを上回ります。
身体に痛みがある間は、心の傷を見なくてすみます。
また、「自分を見て欲しい、認めて欲しい」という思いから、自らを傷つけることもあります。
被害に遭った方は、想像できないくらいの深い傷を負うからこそ、回復のための行動も、想像できないことがあるのです。ですからあなたが、被害に遭った方を「理解できない」と感じてしまうのは、仕方がないことなのです。自分を責める必要はありません。
2) 加害者への怒り
(1) 加害者をゆるせない
  • 身近な人が被害に遭ったあなたが加害者に対して怒りを感じるのは当然です。大切な存在を傷つけられたあなたも被害者です。
  • あなたが怒りを表してくれることは、被害に遭った方にとって、自分と同じ想いを持つ存在を感じることができ、大きな心の支えとなります。
(2) 加害者をこらしめたい、やり返したい、訴えたい
  • 加害者への怒りの感情は被害に遭った方を支えますが、加害者に対してどのような対応を取るかを決めるのは、被害に遭った方本人です。
  • 被害に遭った方は、自分のもともと持っていた力が弱まり、自分に対する自信をなくしています。あなたが加害者への対応(裁判を起こす等)を決めようとすることは、被害に遭った方にとっては、「自分の人生を自分で決めることができない」という、自分への無力さを一層深めることにつながります。
  • あなたが加害者を裁き、罪を与えることはできません。あなたが加害者に直接害を及ぼそうとすることは、被害に遭った方にとっては、「自分が被害に遭ったことで、身近にいる人の人生まで狂わせてしまった」という、自責の念を一層深めることになります。
  • 性暴力被害は、被害に遭った方を深く傷つけます。ですから身近にいるあなたが、「加害者を自分の手で何とかしてやりたい」と考えるのは、当たり前の感情なのです。自分を責める必要はありません。
3) 自分自身への怒りやふがいなさ
(1) なぜ身近な人を守ることができなかったのか
  • 性暴力被害に対しては、「一部の人にしか起こらない」「1人で暗い夜道を歩かなければ被害に遭わない」といった誤解があります。あなたが誤った情報を信じていると、「自分があの時こうしていれば、被害に遭わなかったのではないか」という、自分に対する怒りの感情が湧き上がり、耐えられなくなってしまうことがあります。
  • 性暴力は、誰でも被害者、さらには加害者になる可能性があります。そしてすべての責任は加害者にあります。被害に遭った方にも、そしてあなたにも、責任はありません。
  • 身近にいる大切な存在が被害に遭ったからこそ、「自分は被害が起きないようにすることができたのではないか」と考えてしまうのは、当たり前の感情なのです。自分を責める必要はありません。
(2) なぜ自分の力で被害に遭った方を回復させることができないのか
  • 性暴力被害からの回復には、とても長い時間がかかります。また、「回復した」と思っても、何らかの出来事や誰かからの一言によって、前の状態に戻ってしまうこともあります。被害に遭われた方が辛さと闘っている姿と接するたびに、「なぜこんなに近くにいる自分は何もできないのか」という、自分の無力さにむなしさを感じ、耐えられなくなってしまうことがあります。
  • 被害に遭った方を回復させることができるのは、被害に遭った方本人だけです。周りにいる人は、それを応援し、支えることはできますが、本人に成り代わることはできません。被害に遭った方の人生は、被害に遭った方のものです。あなたが決めることはできないのです。
  • 身近にいる大切な存在が被害に遭ったからこそ、「自分にもっと力があれば何かできるのではないか」と考えてしまうのは、当たり前の感情なのです。自分を責める必要はありません。



XE Login